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センターの6次化事例
2019年7月22日

『地元の食材で醸成した酵母を使った手づくりの食パン、カンパーニュ専門店をオープンさせたい』


事例23


手づくりパン工房ここあ
杉山 美雪 さん

 

 

『地元の食材で醸成した酵母を使った手づくりの食パン、カンパーニュ専門店をオープンさせたい』

 事業者:手づくりパン工房ここあ 杉山 美雪さん (石巻市)

 

主な販売先:手づくりパン工房ここあでの直売のみ(現在は第2・4土曜日のみ営業)

取組:地元食材を使用し醸成した自家製天然酵母でパンをつくった。また、自身のパン屋をオープンさせるにあたり、石巻市6次産業化・地産地消推進センターの支援員と一緒にチラシやショップカードの制作を行った。

取組後の成果:地元食材を使用した天然酵母のパン屋ということが少しずつだが認識され始めている。チラシ、ショップカードに食パン、カンパーニュのイラストを入れたことにより、「食パンとカンパーニュの専門店」であることが周知でき、他のパン屋との差別化を図ることができた。

 

※石巻市6次産業化・地産地消推進センターを、
以下より「6次化センター」と表記いたします。

 


6次化センターへのご相談のきっかけ


『石巻に根差したパン工房をつくりたい』

 石巻の食材で醸成した自家製天然酵母でパンをつくり、地元の方々が集まれる場所として、この地域に根差したパン工房をつくりたいと思い相談しました。当初、石巻市内のコワーキングスペースに足を運んでおり、そこで自分のパンづくりの考えや夢について話を聞いてもらう機会がありました。その中で、私の目指すパンづくり、お店づくりの分野において豊富な知識を持った方がいるとご紹介いただいたのが、6次化センターの支援員をされている方でした。

 以降、その方に相談していく中で、6次化センターの存在を教えていただき、今回のセンターとのご縁に繋がりました。

 


杉山さんと6次化センターの取り組み内容


『地域食材を使用したパン、そして地域の方が集うお店』

 地元食材で醸成した自家製天然酵母のパンをつくるという方向性は決まっていたものの、当初はまだやりたいお店の形は固まっておらず、なんとなくベーカリーカフェのような形を思い描いていました。しかし、「自分が本当にやりたいことはなにか?」と自問自答した時、「私がやりたいのは“パンをつくって売ること”だ」と思い、方向を切り替え、パン屋一本でいくことにしました。

 一方、地元には商店等もなく、近所の方が集まれる場所がありません。昔は婦人会等のコミュニティがあり、横の繋がりが非常に盛んな地域だったのですが、宮城県北部連続地震や東日本大震災の後からだんだんと繋がりが薄れ、次第に人が集まる場所もなくなってしまいました。そこで「私がやらなきゃ誰がやる」と奮起し、ただパンを売るだけのお店ではなく、地域の方が集まれる場所にしていこうと決めました。

 そこで、6次化センターの支援員の方と相談し、この地に根差したお店をつくろうと、少しずつ動き始めました。地域の方に集っていただくにも、まずはお店のことを知っていただく必要があるだろうと、ショップカードや店のチラシを作成しました。同時に、パンづくりは、できる限り地元産の農産物などを仕入れ、酵母醸成に取り組みました。使う食材によって酵母の出来上がりも違うので、今はどんな食材でどんな仕上がりになるのか研究を重ねているところです。また、現在はパンの包装も作成中で、最終的には娘が描いた食パンやカンパーニュの絵をモチーフにしたシールをつくり、包装に活かしていきたいと考えています。

 


6次産業化に取り組んだ成果


『他にはない「食パン、カンパーニュ」の専門店』

 自家製天然酵母を使用したパン屋であるというのが当店のこだわりですが、食パンとカンパーニュの専門店であるということも大きな特徴の1つです。食パン、カンパーニュ専門店にしたことで、他のパン屋さんとの差別化ができたと思います。自家製天然酵母を使用したシンプルな食パン、カンパーニュのファンも多く、お客様には喜んでいただいています。また、このようなシンプルな食事系のパンも人気ですが、女性にはレーズンやドライフルーツが入ったパンも好まれます。こういったお客様に喜んでいただけるものが何かというところも見えてきたので、今後はわが家で栽培しているカリンを使ったパンなど、石巻産を前面に出したバリエーションも少しずつ増やしていけたらと思っています。

 また、FacebookやInstagram等で情報を発信しており、そこから口コミでお店のことが広まったり、ご来店いただいた方には「また来るので、次の営業日を教えてください」とお声がけいただいたり、少しずつ認知度が上がり、リピートしてくださる方も増えてきました。このように、一歩一歩ですが地域の方が集まるきっかけと言えるものが生まれています。まだお店をオープンして間もないですが、これが定着し、パンを買いに来てくださったお客様が、世間話でもできるような居心地のいい場所づくりをしていけたらと考えています。

 6次化センターの支援員の方にご協力いただいたチラシ、ショップカードには、地図や、食パン、カンパーニュのイラスト、パンの保存方法などを入れていただいたので、お客様には「食パン、カンパーニュの専門店」と認識して来ていただきやすくなったと思っています。

 

 ここあ様ショップカード※明るさ調整済
食パンとカンパーニュのイラスト入りのショップカード
“ここあ”の文字は娘さんが書いた

 


6次産業化への取り組みで苦労する点


『地元産の原材料をそろえたいが難しい』

 自分で醸成した自家製天然酵母でパンづくりを一から行っているのがこだわりである反面、全ての工程を一人でやっているので、量をたくさんつくれない点は苦労する部分です。

 そして、この酵母はできるかぎり地元の野菜や米などを使い醸成していますが、時期や仕入れる量の問題もあり、なかなか全ての原材料を地元のものでそろえることができないのも課題です。6次産業化に取り組みまだ日も浅いため、今は、どうやればうまく回していけるか試行錯誤しながら、取り入れる石巻産の食材の量を少しずつ増やしたり、季節的なタイミング見計らって仕入れる工夫を検討したりと研究中でもあります。

 また、こういった自家製天然酵母からパンづくりまで一貫して取り組んでいること自体、まだまだ地域の方々に知っていただけていないので、今以上に情報発信をしながら認知度を上げていかなくてはならないというのも、今後の課題として考えています。

 

厨房※明るさ調整済み
こあさんのパンづくりを行うスペース
ここで杉山さんは酵母の醸成からパンづくりまでを行っている

 


販売商品への想い・こだわり


『みんなに食べてもらえるパンづくり』

 パンは、小さなお子さんからお年寄りの方まで、みんなに楽しんでいただけるものにしたいと考えてつくっています。特にアレルギーをお持ちの方にも食べていただけるように卵は使っていません。また自家製にこだわる酵母は、「楽健寺酵母(らっけんじこうぼ)」と呼ばれるもので、先にも述べたように地元の野菜や果物、米をできる限り使用して醸成しているのがこだわりです。お米はわが家で育てているササニシキも使用しています。自家製の酵母は、パンに「表情」を持たせます。酵母は使ったら使った分だけ継ぎ足しながらやっているのですが、その継ぎ足す際に入れる野菜や果物の種類で出来上がりのパンの特徴が異なるのです。リンゴを入れればフルーティな香りになりますし、山芋を入れれば発酵力が増した仕上がりになります。今は、どうすれば自分が思い描いた酵母やパンに仕上がるか試行錯誤し、毎回異なる表情を見せるパンを、愛情を込めて焼いています。そして、その中から納得のいく仕上がりのものだけを店頭に並べています。今は、ある意味こういった様々な表情のパンを楽しみながらつくっていますが、ゆくゆくは酵母だけでなく、地元産の小麦や塩を使うなど石巻にこだわり、自分の理想のパンづくりをしていけたらと考えています。

 少し先の展開としては、焼き上がり時間をSNS等で地域の方以外にも発信し、他の地域の方にもここあのパンを楽しんでいただけたらと思っています。また、いずれは自家製の干し柿などを使用したお菓子などにも挑戦していきたいです。

 

DSC_0941
主に地元の食材を使い自身で醸成した酵母

 

パン※明るさ調整済 試作パン※明るさ調整済
試作中のパン
酵母の違いがパンに個性を持たせる

 

店頭に並んだパン※明るさ調整済み
店頭に並んだパン

 


6次産業化を検討している方々に伝えたいこと


『悩むより、話しを聞いてもらい、一歩でも夢に近づけてほしい』

 一歩を踏み出し、新たな扉を開けるのはなかなか難しいかもしれません。私自身、6次産業化に取り組むまでとでも悩みました。しかし、いろんな方に話を聞いてもらうことで世界が開けたのです。様々な立場の方に相談することで、これまで見えていなかった、自分がこれからすべきことが見えてきました。悩むより、行動を起こすことで、一歩でも夢に近づけると思います。

 

看板※明るさ調整済み
パン工房ここあさんの看板
お店の営業日にはこの看板が玄関でお出迎えする

 

ここあ様入り口※明るさ調整済
当面は第2・4土曜日の営業
自分のペースでやっていきたいと話す杉山さん